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佳乃は廊下を渡り、応接間の隣にある和室へ入った。
そこには大介の親戚の方々が今日の法事のために集まっていた。
「おぅ、佳乃ちゃん。今年も悪かったね」
「佳乃ちゃん久しぶり。綺麗になったね」
親戚の方々も、もう佳乃と顔見知りになっていて、気軽に話しかけてくる。
それを佳乃は薄く微笑む形で会釈をして返す。
数年経てば、人は法事の時は世間話をしながら笑ったりもできる。
佳乃も親戚の冗談に調子を合せて笑う振りをした。
「佳乃ちゃん」
後ろからかけられた声に、ビクッと両肩が跳ねた。
周りの親戚はその声の主にすぐに振り向いて、おお、と気軽に声をかけている。
その声は、佳乃の呼吸を簡単に乱した。あまりにも大介の声に似ているからだ。
一泊置いてゆっくり振り向くと、大介の弟の広樹が立っていた。
「佳乃ちゃん、今年も来てくれたんだね。アニキのために……ありがとうございます。」
広樹は、あの時の大介と同じ年になっていた。
久しぶりに会った彼は声だけでなく、その容姿まで大介に似ている。
「……あ……久しぶり。大きくなったね。声が大介にそっくりで、びっくりしちゃったよ。」
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