さよなら青春

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新名伊吹(にいな いぶき)とは、高1から3年間ずっと同じクラスだ。 出席番号順の席ではだいたいいつも隣で、話す機会はたくさんあって、気の合うクラスメイトだった。そこからすきに変わるまでそう長くかからなかったんじゃないかなあ。たぶん。気づいたらもうすきだったからよくわかんない。 高2の始め頃にあった進路説明会で同じ大学を目指していることがわかって、今までよりもニーナとの距離が近づいた気がした。 少女漫画がすきなあたしは、もう運命なんじゃないかってこっそりはしゃいだ。まあ、全然そんな感じなかったけどね。 高2の秋にはニーナ、彼女できてたし。あたしはもう、すっごく落ち込んだ。でもニーナのやつ1ヶ月もしないうちに別れた。 あのときはニーナが「ナナといるほうが楽しい」なんて思わせ振りなことぬかすから、超殴りたかったな。オトメゴコロもわかんないバカが言うセリフじゃない。 嬉しい気持ちが勝ってた単純なあたしは、実際には殴らなかったけど。 高3の夏、ニーナのお父さんが倒れた。オープンキャンパスに一緒に行って絶対に受かろうって話をした次の日、泣きそうな声で電話がかかってきた。発見が早かったために一命はとりとめたものの、後遺症が残るかもしれないというのを聞いて、ニーナのこれからの予想がついてしまった。 思った通り、ニーナは進路を就職に変えた。あたしは変わらず、大学進学のまま。 ニーナは「仕方ねぇよ」って笑ってた。長男だから、家族を支えなきゃって。あたしに受験がんばれとまで言ってくれた。 だけど、あたしは何も返せなかった。あたしが言っていい言葉がどんなものなのか、あたしにはわからなかったんだ。
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