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僕には高校時代にO君という同級生がいました。
O君は高校卒業後、漁師である父親の船に乗って働くことを決意。
僕はというと冴えないFラン大学を卒業後は、都会の零細企業で営業の仕事に翻弄されていました。安月給で炎天下の外回りです。
帰郷した際はO君と会うのが恒例行事になっていました。O君は二十代なのに金をガンガン稼ぎ、飲みに行くといつもおごってくれたので最高にありがたい存在なのです。
その年も僕は短い休みを利用して実家のある港町に帰郷し、O君と落ち合いました。居酒屋で酒を酌み交わしながら、懐かしい高校時代の思い出を語り合いました。
「まだ何日か町に残るなら、バイトしないか?」酒の回ったO君は顔を紅くしながら突然僕を誘ってきました。
「バイトって、船に乗れってこと?」
「もちろん。他に何がある?」O君はジョッキに三分の一くらい残っていたビールを飲み干しました。
「無理だよ、無理。ゲロ吐いて終わりだって。ていうかなんで休みの日に働かないといけないんだよ・・・・・・」僕は拒絶しました。
「簡単な仕事だから安心しろ。俺の補佐をしてくれたらそれでいい」
「時給いくら?」
「時給じゃないよ。1回手伝ってくれたら50万やる」
「嘘でしょ? ハイ、ハイ! やる、やる!」僕は両手を挙げて引き受けました。
「よし。早速いこう。ちょうど仕事があるんだ」
「え、今から? どんな仕事なの?」
「このバイトの条件は、深く詮索しないことだ」
「・・・・・・」
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