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町の灯が小さくなっていくのを船に揺られながら眺めていました。
O君が船を操縦する姿は非常に頼もしく、漁師になったんだなと改めて実感できたのですが、足元に置かれた箱が気になって仕方ありませんでした。
船が揺れる度に、箱の中に入っている凍った物体が「ゴツン」と側面に当たっているのが分かりました。
「箱の中に入ってるものが何なのか、なんとなく想像できるんだけど」僕は口を開きました。
「・・・・・・」O君はまっすぐに黒い海を見つめていました。
「暴力団とかからの依頼?」
「想像にまかせるよ。依頼される漁師は口が堅いことが条件なんだ」
「もう俺にバレてんじゃん」
「お前は口が堅いだろ・・・・・・それにこの仕事は1人でやりたくないんだよ。最初の頃は1人でやってたけど、夜の海をさ、箱を乗せながら走るのはすげー怖いんだよ」
「・・・・・・やめればいいじゃん」
「一度引き受けたら最後なんだ。次から次に倉庫に運び込まれるようになってしまった。断れば死体遺棄の罪で密告されて俺は逮捕されてしまう。もう続けるしかないんだよ」O君は涙声になっていました。
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