漁師の闇バイト

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 町の灯が全く見えない場所でO君は船を止め「着いたぞ」と暗い声を出しました。  夜の海は死体を乗せていなくても恐ろしい光景でした。月が異常なくらいに存在感を出して空に浮かび、月光が黒い海面に淡く揺れていました。 「箱から出すぞ」O君は僕に手袋を渡しました。 「このまま捨てるんじゃないの?」 「それだと海に浮かぶだろ。中の死体は袋に入ってるから、そこからも出さないといけない」 「マジかよ・・・・・・」  フタを開けると、半透明な死体袋に入れられたそれが姿を表しました。肌は青白く、目はカッと見開かれたままで、口は半開きでした。通常葬式などで見られる死体はエンバーミングされているため、眠っているみたいになっていますが、何も手を加えられていない死体は、最後の瞬間をそのまま形として残していました。  O君はジッパーをゆっくりと下げました。冷凍庫に入れられた際に付いていたと思われる霜が解けて、髪は濡れていました。  僕は足首、O君は腕を掴み、ゆっくりと運びました。手袋越しに冷たさが手のひらに伝わってきました。仰向けになった死体はまっすぐに夜空を見上げているのですが、突然眼球が動いて僕を睨みつけてくるのではないだろうかという想像が膨らんでしまうため、なるべく顔を見ないようにしました。 「せーの」で海の中にドボンです。口から気泡を出しながら死体は海の底に沈んでいきました。 「これを、1人でよくやってたな・・・・・・」僕は体中が震え、足から力が抜けていくのを感じていました。 「・・・・・・いつまでこれを続けないといけないのか分からないんだぞ。もう地獄だよ」  僕は船の上で50万円を手渡されました。一回捨てるごとに組織から100万円を貰えるみたいでした。O君はきれいに折半してくれたのです。
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