人と独

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霧丘高校卒業式。 そう書かれた大きな看板を見つめながら俺はひとり物思いにふけった 今日を持って、高校3年生の青島智葉は消える。 俺は、ガキの頃から一緒の友人、吉田と村上に声をかけた。 「今まで、ありがとうな」 「なーに言ってんだよ!また会えるじゃんか!」 「でも、違う学科だし」 「ホント、さみしくなるね。」 「俺らには今までの思い出がある。それだけで寂しさなんか吹っ飛ぶだろ?」 「そういうもんか?」 あぁ、こんなふうに笑うのも今日が最後か 「僕、ちゃんと思い出を胸にアメリカへ行ってくるよ」 「明日、俺は寂しさ消すために一人カラオケ行こうかな」 「おう!楽しんでこいよ!アルバムだけはちゃんと持ってけよ?」 「もう、旅行に行くんじゃないんだよ?アルバム、ちゃんと持ってくよ。独りぼっちは寂しいもん」 「吉田こそ、アルバム失くしたとか有り得そう」 「な、な訳ねーだろ!」 ふと、三人で空を見上げる 「もう、黄昏時だ」 「そろそろ帰らなきゃな」 「うん、そうだね」 「あ、そうだ!家に帰ったらアルバム、見ろよ」 「え?」 「なに、いきなり」 「見りゃ分かるって!じゃ、俺帰るわ!」 そう言って吉田は帰ってしまった。 「帰るか」 「うん、そうだね」 その後は、もうよく覚えていない ひとつ言えるのは、家に帰ってアルバムを見た時 「…これ」 村上が、映っている写真が、一枚もなかったことだ 全て、人一人分が空虚と化していた 「あぁ、そうか」 吉田、お前、俺がムラカミと話してること、気づいてたんだな あいつが、もう存在していないことを認めなかった俺に、認めさせるために…こんな… 「うっ…」 自然と涙が溢れた 村上が生前、アメリカへ行きたがっていたからこんな…こんな妄想までしていたのか 「吉田、ありがとう。俺、ちゃんと現実を見れるように頑張るよ…」 村上、もう、独りぼっちにはさせないから 黄昏時~人と独~
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