君からの贈り物

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もう地元に来ても扇には逢うことがない。逢いたいのに逢いたくないと何度も思い続け、今こうして話しているのに、扇が遠く感じた。 「帰るか。」 「うん。そうだね。」 俺たちは互いの家までの道の分かれ道まで会話しながら帰って行った。それなのに、扇と何を話したのか記憶に残っていない。帰り道、俺は扇と何を話したのだろう。 実家に戻り、シャワーをしてから、自分の部屋へと行ってベッドに横になる。 翌朝遅めの時間に起きた俺は、仕事があるからとみんなに言って、一人暮らしのマンションへと帰った。 自分の部屋の帰り、勇気を振り絞って扇から貰ったアルバムを手に取る。なかなか開けずに、そのままベッドに腰掛けながら、アルバムを見つめていた。 どのくらいそうしていただろうか。携帯にメッセージが届いた音でハッとして、携帯のメッセージを開く。 そこには、扇からの引っ越しを考えている都市名が書かれていた。 「嘘・・・。マジ・・・?」 俺は驚きでアルバムは手から滑り落ち音を立てて床に落ちてしまった。携帯を床に落とさなかったことだけは後から気付きホッとする。 けれど床に落ちたアルバムは開かれていて、そこに書かれていた文字に動けなくなった。 「えっ・・・。嘘、だろ?」 俺は慌ててアルバムを拾い上げ残りのページを捲っていった。そしてあるページには、卒業式からちょうど1年後、ある場所で会おうと書かれていたのだ。 俺はアルバムを今まで開いていない。扇からしたら約束を破られたと感じると思う。だけど、昨日の扇の言葉からは怒りを感じられなかった。 そして、タイミングよくまた携帯にメッセージが届いた音がなる。 メッセージを読んだ俺は、アルバムをしのままベットに置いて、一度リビングのテーブルに置いた財布と携帯をポケットに押し込み、鍵を手にしてマンションを飛び出した。 一度に色々ありすぎて頭が混乱している。けれど、今は駅に向かわなければならない。 だって、扇がこっちに来ているのだから。 俺は全速力で走り、駅まで着くと周囲を見渡して、扇を探した。 近くのベンチに扇の姿を見つけて駆け寄って行く。 「律、そんなに慌てなくてよかったのに。」 「だって。扇が・・・。って何、その荷物!?」 「ん?もうこっちに住もうかと思って。」
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