君からの贈り物

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ゆっくりと距離を縮めてきた扇は、視線を逸らすことなく俺の首に両手を回してきた。扇と触れ合っていることが嘘のようで、心臓の勢いを増した音が聞こえてしまうのではと焦る。 あの日、俺はこんなことよりもっと凄いことを扇にしていたのに、今はこうして触れるだけで落ち着かない。 「律、愛してる。ずっと、ずっと。」 温かいものが頬を伝っていくのを感じた。俺がずっと欲しかった言葉が今、愛おしい扇の口から発せられて、今まで押し込んでいた扇への思いが、溢れ出てきて止まらない。 「律が泣いてるの初めて見た。」 そう言って扇は俺を抱き寄せる。身長はあまり変わらない扇の肩に顔を埋めた。互いの心臓の音が重なり合うように聞こえた気がする。自分の心臓の音がうるさくて、自分だけかもしれないけど、と思い直した。 「扇、好きだ。───愛してる。」 やっと伝えることが出来た。あの日も自分だけ一方的に思いを告げてそのまま扇を無理やり抱いてしまった。でも、何も言わなかった扇は嫌だとは言っても俺を拒絶はしてなかったと思い出す。 ただ、俺たちは言葉が足りなかっただけだった。気持ちだけが先走ってしまい、扇が何かを言う前に押し倒して、勢いで最後までしてしまったのだ。 「よかった。律の気持ちが変わってなくて。」 耳元で透き通るような扇の声が聞こえて、身体が熱を持ち始めるけれど、もうあの頃のように勢いでというほど若くはないらしい。 「変わってるよ。前よりも、もっと、扇が好きになってるから。」 「そっか。それなら僕も負けてないよ。僕は律から離れたくない。」 俺が扇に伝えると、扇からの言葉で胸が締め付けられ、扇を強く抱きしめた。離れたくないのは俺も同じだ。だからといって互いに仕事もあるし、その時間までも離れないでいるわけにいかない。だったらせめて─── 「扇。このままここに住んだらいい。でも、夜はどうなっても知らないからな?」 「仕事に支障がでない程度でお願い。僕が欲しくてどうしようもなくなるかもしれないけど。」 「扇、俺、我慢の限界。」 「あぁ、うん。それなら僕も同じかな。」 俺は扇をベッドに押し倒した。あの日とは違って今度は扇も同意を口にしてくれている。今度こそ、俺たちは全てが繋がるのだと感じた。 (終)
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