君からの贈り物

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なんとか話が纏まって電話を切って脱力する。今回の同窓会は行かなきゃならないだろう。今まであまり休みを取ることがなかった俺は、きっと希望通りの休みが取れるに違いない。 翌朝出勤して仕事前に休みの届け出を出すと、すんなりと受け取られてしまった。そのまま希望日を休みにしてくれると言われ、俺は休憩時間に水岸に休みが取れた日をメールで知らせる。少しして水岸も休憩なのか、わかったと返信があり、これで同窓会に行かなければならなくなったなと、内心憂鬱で仕方ない。 1度だけ身体を重ねた君が忘れられないまま、もし同窓会で会うことになったらどうすればいいだろうか。高校を卒業してから身体だけの関係を持った女性は何人かいるが、君に重ねて毎回行為を重ねていた。失礼だとわかっていながら、ただの処理の相手として女性を抱いていたんだ。 ───逢いたいけど逢いたくない。 君に嫌われたままなのが嫌なのもある。けれど、それ以上に君の左手の薬指に光るリングがあるかもしれないと思うだけで、きっと俺の心は壊れてしまう。 でも、きっとこれは前に進むために、乗り越えなければならない壁なのかもしれない。それならば、ありのままを受け入れて、乗り越えていくしかないのだろう。 いい加減向き合わなければならないのかもしれない。そして、あのアルバムを開かなければならないのだと思う。同窓会に参加して、少しでも前進出来たなら、君からもらったアルバムを開いてみよう。 胃が痛むのを何とか堪えながら、この日は仕事を乗り切った。翌日も、そのまた翌日も。 そうして希望通りの休みが取れた日の朝、いつもの時間に起きて地元に帰る準備をする。 1日分の着替えだけを、それほど大きくない手提げカバンに入れ、いつものように携帯と財布をポケットに押し込んで、一人暮らしのマンションを出発した。 地元までは電車で2時間の距離。ここまで離れた場所を選んだのは、君に逢ってしまうかもしれないという危険を避けるため。逢いたい気持ちと逢いたくない気持ちは絡み合って、どうしても俺は避けてしまっていた。 電車の窓から見える景色が懐かしい物へと変わってきたが、所々が違って見えるのは10年の間に変わってしまった場所だろう。
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