君からの贈り物

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携帯を開いて見ると、そこには新しい扇の携帯の番号とアドレスが届いていた。慌てて扇を見るとニッコリと笑顔を俺に向けている。またしても俺の心臓は勢いを増して動き始めた。 なんとか扇を見ない様にして落ち着けたはずの心臓は、扇の笑顔には負けてしまうらしい。俺は扇を思い出に出来るのだろうか。こんなことで他の人を好きになれるのだろうか。今すぐ扇を抱きしめたい衝動を抑えるのに必死なのに。もう一度あの時の快感を身体が欲しているのに。 とりあえず記憶をなくす一歩手前まで酒を飲み続けよう。このままではきっと俺は最後まで持たないだろう。 酒の力を借りて、みんなと話しながら、扇とも普通に話せているように思える。俺はなんとか大丈夫みたいだ。最後までなんとか持ちこたえた俺は、帰り道みんなと別れ、途中の公園に入り、酔いを醒まそうとミネラルウォーター片手にベンチに座った。 「律、帰らないの?」 「ん?ちょっと飲みすぎたから少し休んでから帰る。」 「そっか。僕もそうしようかな。僕にも水ちょうだい?」 扇はそう言うと俺の隣に座り、俺の持つミネラルウォーターを指差してほしいという。あの頃キスを何度もしたのに、今更間接キスに狼狽えるほど若くはないのに、どこか戸惑ってしまう自分がいる。 それでもあげないわけにもいかず、少しだけ飲んだミネラルウォーターのペットボトルを扇に差し出した。 「扇、俺が嫌いじゃなかったのか?」 「はぁ・・・。だから渡したアルバム見てほしかったのに。やっぱり遠回しじゃダメだったんだね。」 何が言いたいのかわからず、アルバムを見なかった俺が悪いのかと、よくわからない返答に困る。嫌いではないと受け取っていいのだろうか。それでもきっと俺を好きということにはつながらないはずだ。 「僕ね、今度引っ越すんだ。でも、まだ引っ越し先が決まってない。どこでもいいかなとは思うんだけど、ここがいいかなってところはいくつか出てきた。今メモもってないから後でメッセージ入れるよ。」 「あー、うん。俺がいるとこの近くなら休みの時きてくれたら案内くらいするけど。」 「わかった。その時はお願いね。」 ペットボトルを返され、扇が引っ越すという言葉に一気に酔いが醒めていく気がした。
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