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まるで心臓をきゅっと締めあげられたような、血管の中を小さな蛇がうねうねと泳いでいるみたいな気持ち。
眼窩の脂肪がなくギョロリとした目と、魚の骨のように細い顔立ちの、なんとも不気味な女だ。
なによりもヤバいのは、その目だった。
まるで沼の水のように、どろりとして濁っている。
「よ、ようこそいらっしゃいました」
いつもは口を滑る挨拶もつまずいている。
「アイシャ先生……愛写で見てください」
挨拶もなしに女性がしゃべると、その声で部屋の温度が2度下がった。
(いきなり愛写を要求してくるなんて、誰かの口コミで知ったのかしら?)
なにやらクチャクチャと口の中で噛んでいる。不作法な客だ。
「それではお相手の名前と生年月日を」
そっと差しだした紙に、女性が釘で引っ掻いたみたいな文字を刻んだ。
それは病んだ者のはげしさである。
「では写しますね」
なるたけ愛想笑いをしながらカメラを写すが、その笑みは痛いほど唇をひくつかせた。
(あら、良い男じゃない。なんだか不釣り合いなカップルね)
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