本屋さんとインチキ

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 マムシは読子から詫びを含めた百万円のピン札を受け取ると、借用書を渡して帰って行った。  本来のマムシの算段ではなにかと理由をつけてゆうなからお金を搾り取り、あわよくば泡に沈めるつもりでいた。だが先に非礼を働くことで詫びとして予定以上のお金を提示されればマムシも引かざるをえない。  読子の勘ぐりはそれを踏まえた上でのブラフだった。  目の前で起きている状況に困惑していたゆうなだったが、マムシがいなくなると読子に噛みつく。なんていうことをしたのかと。 「店長……私のためにあんな大金を……」 「早とちりはいけないわよ。コレさえ手に入ればこっちのモノだから」  そう言うと読子は秘蔵のアイテムを取り出した。  左右一対の白手袋のような不思議な道具(アーティファクト)を。 「サイコメトリーライトで読み取った過去をイレギュラーレフトでスマホに出力っと」 「店長それは……」 「いわゆる不思議な道具というやつね。右手のが過去の映像を記憶する手袋で、左手はそれを様々な媒体にアウトプットできる手袋。めったなことじゃ使わないけれど便利なんだから」  読子の魔女としての顔を知らないゆうなにはそれが信用できなかった。  だがこの道具を使って抜き出した改ざんの様子を映した映像を読子が友人に託してから数日後、あっさりとマムシが逮捕されて彼らにむしり取られたお金が戻ってきたことでゆうなもそれを信じざるを獲なくなった。 「これは夏のボーナスと心配させたお詫びを兼ねた手間賃よ」  読子は戻ってきた百万円から札を数枚抜いてゆうなに手渡した。     
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