本屋さんとインチキ

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本屋さんとインチキ

 夏休みに入ると人魚書店の様子は少し変わってくる。それまで定まっていたシフトが様変わりするからだ。  帰省する子は休みを取るし、地元の子は出勤を増やして遊び金を求める。  今回の主役はどちらかと言えば後者であろう。 「最近働きっぱなしだし大丈夫?」 「まだまだイケますよ」  そう答えたのは蒔狩ゆうなという子だった。大学四年で授業も少ない彼女は普段から出勤日数も多い。  そんな彼女がさらに根を詰めている様子に流石の読子も心配してしまう。 「それにコンビニの深夜バイトよりは楽ですし」 「それはそうだけど……というか、あの時は結構迷惑したんだから。ゆうなちゃんには自重してほしいのよ私も」  このゆうなは春先にコンビニでバイトをしていた時期がある。授業が減ったことで空いた時間を有効活用しようと考えた結果、無茶な夜勤を繰り返してしまったのだ。  深夜に客の前で倒れて警察沙汰になったことで彼女はバイトを首になったが、その際にコンビニのオーナーから読子もだいぶ小言を言われていた。 「あと……進級してから妙にお金に執着しているけれど、いったいどうしたのよ?」  読子の心配はもう一つある。     
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