5

1/3
前へ
/39ページ
次へ

5

大学の試験期間が終わり、帰省の時期になった。寮内では、試験を終えると早々に帰省する者、部活動やサークル、バイトなどのために寮に残る者など様々であった。 絵莉子は8月中はサークルの練習と、合宿とは名ばかりの旅行のために、寮に残るつもりであった。そして9月いっぱいは帰省をする予定であった。 薫はというと、気がついた時にはもう荷物をまとめて帰省の準備を始めていた。 「えっ、薫ちゃんもう帰っちゃうの」 「うん」 「そうなんだ、寂しくなるなぁ」 「そうなの?」 言葉は少ないが、絵莉子の言葉に照れ笑いを浮かべる。 (初めて会った時にくらべて、だいぶん距離が縮まったよね。なんか感慨深いな) 絵莉子は心の中で呟くのであった。 「絵莉子ちゃんは? いつまでいるの?」 「8月はずっといるよ。9月に帰るんだ」 「そうなんだ」 そう言うと、薫はまた荷造りに戻る。 「えっ、じゃあこれからほぼ2ヶ月薫ちゃんに会えない事になるじゃん」 「死ぬわけじゃないから大丈夫だよ」 「うう…クール…」 薫は少し笑う。絵莉子は、薫が笑うのを見る頻度が多くなっている気がした。そしてそれは嬉しいことであった。 (薫ちゃんはそのままでもきれいだけど、やっぱり笑った顔が1番きれいだよね、…とか言ったら変態って思われるかな…。 それにしても、最初はどうなることかと思ったけど、仲良くなれて良かったよ)
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加