39人が本棚に入れています
本棚に追加
長い夏休みが終わり、絵莉子は再び寮の廊下を歩いていた。
寮に帰る前に一応薫に連絡を入れたら、薫はすでに寮に戻っているということであった。同居人との久々の再会に心が躍る。
「ただいまー…」
妙に緊張する、そう思いながらドアを開ける。中には、Tシャツにステテコ姿の、拍子抜けするほどラフな格好の薫がいた。見慣れた服装ではあったのだが、夏休み前とあまりにも変わらない。
「おかえり」
薫はあっさりとした様子で出迎える。ほぼ2ヶ月ぶりの再会をものともしていない。
「薫ちゃん元気だった?」
「ふつうだよ」
「ふつうって…もっとこう、なんかないの!? 2ヶ月ぶり感動の再会は…」
「感動も何も…また同じような生活に戻っただけなんだから」
「うう…クールすぎる…」
絵莉子はいじけた顔を作った。薫は口の端を上げ「ふっ」と鼻で笑ったが、独り言のようにぽつりとつぶやいた。
「でも、こうやって帰ってくる人がいるのもいいもんだね」
「えっ…うわぁ、レアな薫ちゃんが出た」
絵莉子はますます追及しようとしたが、躱されてしまった。しかし、絵莉子の胸にはじんわりとした多幸感が広がるのであった。
最初のコメントを投稿しよう!