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大学が後期に入るとともに、学生たちの学園祭の準備も始まった。それは絵莉子が所属するアカペラサークルでも例外ではなかった。 学園祭での野外ライブは、アカペラサークルにとっての一大イベントの一つであった。そのため、部員たちは夜遅くまで大学に残って練習をした。 また、学園祭で売るラーメンはサークルにとっての唯一といっていい収入源であった。その名も「あかぺらぁめん」である。安直なネーミングだ、と絵莉子は思う。 「1人でも多く! 『あかぺらぁめん』に呼んできて!」 サークルの会計担当の先輩は、絵莉子たち1年生にも圧をかけていた。 「たいせーくんの友達、ラーメン食べに来てくれそうな人いる?」 練習終わりに、絵莉子は同じバンドの泰生、通称「たいせー」に尋ねた。 「うーん…サークルに入ってないか、入ってても出店しない奴が多いからな…そもそも学園祭の時期は大学にすら来ないかもしれない、そいつら」 「だよね、私もおんなじ感じだよ」 「売り上げどうなるのかねぇ」 2人は顔を合わせて苦笑した。 「他に誘えそうな奴とかいないの?」 「うーん…」 絵莉子は考えながら、楽譜を片付けた。そのため、その後の泰生の言葉は頭に入っていなかった。 「なあ、学祭終わった後、片付けで1日大学休みになるだろ。まあ疲れてるから休みたいかもしれないけどさ…」 (誘えそうな人、誘えそうな人…あっ) 「もし暇だったら片付けの後飯でも食いに」 「あっ! 1人いた! 誘えそうな人!」 絵莉子と泰生はほぼ同時に話した。 「あっ、たいせーくん、何か言おうとした? ごめんね!」 「いや、大したことない事だから…」
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