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ゆっくりと体を起こし、薫がいるベッドの方に目をやる。もう物音は聞こえない。 (何が…起こったの…。薫ちゃんの体を見て、その後薫ちゃんに首を絞められそうになって、それで…) 絵莉子はベッドの方をじっと見つめる。 (ひょっとして…あれが、薫ちゃんが隠したかった、秘密) 薫の胸は確かに女性特有の膨らみを見せていた。しかし、薫の下半身は明らかに違っていた。 (どういうこと、薫ちゃんは女の子…じゃない?) 混乱が収まらない。すべての真相を知っているはずの薫はすぐそこにいる。しかしどういうことなのか尋ねる勇気など、起こる筈もなかった。 (さっきの薫ちゃん、すごく、すごく怖かった) バスルームで鏡を見ると、首元には爪痕がくっきりと残っていた。それほどに強く掴んだのだろう。 ただの脅しではなく、その気になれば薫は絵莉子を殺すことができるだろう、そう絵莉子は思った。驚いていたということもあったが、力の無い絵莉子はなすすべもなく薫に組み敷かれていた。 シャワーを浴びてからいつものように二段ベッドに入る。しかし絵莉子は、この日ほど一段下で眠っているであろう同居人を恐ろしいと思ったことはなかった。 (そういえば、私が部屋にいるときに薫ちゃんがシャワーを使っていたことはなかった。でも今日はたまたま早く帰っちゃったから… 薫ちゃんが怖い。怖くて…胸がとても苦しい)
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