39人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
(ど、どうしよう…とりあえず会話を…)
「寮生活って始めてだからなんか緊張しちゃうよね」
「そうだね」
返事をしながら、薫は部屋に届いていた段ボールを開け、荷解きを始める。
「あ、薫ちゃんのところもお母さん来てないんだね、私のところもそうなんだけど」
「そうなんだ」
(会話が…続かないっ…! 私が一方的に話しかけまくってる気がする…!)
内心冷や汗を流す絵莉子の方を見向きもせず、薫は荷解きを続けている。
その後もその様な調子で、会話とも言えない言葉のやり取りを続けていたが、不意に薫が絵莉子の方に向き直った。
「ベッド」
「え、ベッド?」
「二段ベッド、私が下でもいい? 」
「あ、うん、どっちでもいいよ」
「お風呂とかの掃除もした方がいいかなって思ったけど、さっき見たらきれいだったから大丈夫よね、それじゃ」
そう言うと、薫は返事を待たずに部屋を出て行ってしまった。
(なんというか…すごくマイペースな人だな)
日用品などを買い揃え、夕食を摂った後部屋に戻ると、薫も部屋に戻ってきており、椅子に座って本を読んでいた。
「ただいま」
「おかえり。シャワー先に使っちゃった、ごめんね」
「全然いいよ、私もこれからお風呂入ろうかな」
(薫ちゃん、そういうところにはちゃんと気を使うんだ。ベッド決める時も一応確認はされたし…当たり前といったら当たり前なんだけど。ただの自由人…ってわけじゃないのかも)
「そう、私は先に寝るけど気にしないで」
「あ、ありがと」
(そこはマイペースなんだなぁ)
絵莉子が浴室から出ると、薫のベッドに付いてあるカーテンはすでに引かれていた。
(ホントに寝ちゃったんだ、寝る前にちょっとお話…って流れにはならないんだね)
絵莉子はベッドで横になりながら、その日の事を思い返していた。
(思ったより誰とも会話のない1日になっちゃった、まあまだ入寮日だし、そんなものかな…
それにしても、薫ちゃんに避けられてる気がするのは気のせいかな…何か嫌われるようなことをするほど、薫ちゃんともかかわっていないし…
まあ、人見知りなだけかも知れないし、心配しすぎても仕方ないよね。それに…
薫ちゃんにも他の女の子にも恋さえしなければ、これからの寮生活はきっと大丈夫なはず)
最初のコメントを投稿しよう!