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食事が終わり、2人は帰路についた。泰生は絵莉子を寮の前まで送ってくれた。 「ここまで来てくれてありがとう、じゃあ気をつけてね」 「おう…あのさっ」 急に泰生が真剣な表情で絵莉子を見つめる。絵莉子は思わずたじろいだ。 「どうしたの?」 「あの…」 泰生はごくりと唾を飲み込んだ。 「俺と付き合ってくれっ」 絵莉子の鼓動が速くなった。しかしそれはときめきのためではなく、この状況への緊張感のためであった。 (どうしよう…たいせーくんと付き合ったら、きっと「普通」の「幸せ」な恋愛ができるんだ。 でも、たいせーくんへの「好き」は友達として…じゃあ恋人としての「好き」は?) その時絵莉子が思い浮かべたのは、泰生と付き合う図ではなかった。 『鳥がいた…から、見てた』 『恋をするって、やっぱり幸せ?』 『でも、こうやって帰ってくる人がいるのもいいもんだね』 (ダメだね…こうやって告白されても、薫ちゃんのことばっかり浮かんでくる。たいせーくんは真剣に告白してくれてるのに… でも、たいせーくんと付き合うことはできない) 「ごめんね、たいせーくんとは友達でいたい。私…好きな人がいるんだ」
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