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告白を断ってからも、泰生は絵莉子に対して普段どおりに接し続けた。もっとも、2人きりになる回数は少なくなったが。 絵莉子は、泰生が変によそよそしくならずにいてくれることをありがたく思っていた。告白こそ断ったが、友人としては申し分ないほど好きであった。 一方、薫との関係はギクシャクしたままであった。挨拶程度のやり取りしかせず、しかも声をかけるのはいつも絵莉子からであった。 そんな風であっても、絵莉子は薫との関係を修復するという望みを捨てられなかった。 絵莉子は、まず薫の体の秘密について知らなければならないと思った。しかし薫本人に聞く勇気はない。そのため、まずは最も手軽な手段であるスマートフォンを使って調べてみることにした。 そして行き着いた言葉は、「半陰陽」や「インターセックス」であった。 (「半陰陽」…女性器と男性器の両方を持って生まれてくる…薫ちゃんもそうなのかな。 あと、性自認…薫ちゃんはどうなんだろう、自分のことを男って思ってる? 女って思ってる? それとも…どっちでもない?) また、大学の図書館で半陰陽に関する本を探した。ちょうどジェンダーについての講義があるためか、ジェンダー関連の書物はある一角にまとめられ、その中に絵莉子の探していた本もあった。 (セクシャルマイノリティ、か…薫ちゃんも、女の子を好きになっちゃう私も、この括りの中に入れられるのかな。よくわかんないや) 調べてわかったこともあるが、調べてますます迷宮入りすることもある。 (薫ちゃんに直接聞かなきゃいけないことが多すぎる…でも、何を聞くの? 薫ちゃんがずっと隠したかったことなのに?) 悶々と考えるうちに、絵莉子はある結論に達した。 (聞きたいことはいろいろあるけど、まずは私の方も秘密を言おう。 私が、女の子を好きになってしまうってことを)
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