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薫との関係修復に失敗した夜から、絵莉子は薫がいなくなってしまう夢をよく見るようになった。 夢の中では、部屋から薫の荷物が全てなくなってしまっている。それだけではなく、薫がいた形跡も全て消え去っているのである。探そうにも、手がかりがない。途方に暮れたところでいつも目が覚める。 自分と薫の関係を繋いでいるものはこの部屋だけなのだ、と絵莉子は思う。ここから薫がいなくなってしまっては、2人は共通点も何もないただの他人になってしまう。 1番近くにいるのに、1番遠い存在。それでも尚、絵莉子は薫の側にいたかった。厳しい表情の奥に垣間見える哀しさと優しさを、何とかして理解したかったのであった。
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