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「うん、ちょっと悩み事というか、心配事があって…」 「心配事?」 泰生が眉を寄せる。 「あっ、私の悩みじゃないんだけどね! 友達がすごく重大な悩みを抱えてて…多分人に知られたくない感じの悩みなんだけど、ちょっとタイミングが悪くてその悩み事を知っちゃって…」 「その悩み事って、家庭の事情とか?」 「あっ、詳しくは言えないんだけど…それで、知ったからといって何もできないけど…でも何かしたい、というか…」 絵莉子のしどろもどろな説明に、泰生は真剣に相槌を打った。 「で、その友達はどんな感じなんだ? 」 「うーん、何ていうか、放っておいてほしい、みたいな雰囲気」 「そうか…でもエリは何とかしてやりたいんだよな」 「…うん」 泰生は絵莉子をじっと見つめた。 「確かに、何かしてあげたいって思えるのはエリの優しいところだと思うけど、でも見守ってやるっていうのも1つの優しさだと思うけどな。何もできない、なんてことはないよ」 「そう…なのかな…」 「焦らなくていいんだよ。エリも、その友達も。いつか力になれる時がくる。それまでずっと味方でいるっていう姿勢さえ示してやればいいんじゃないかな」 「焦らない…か。そうだよね。私は何かしてあげたいって気持ちばっかりが先走ってたのかも…」 「まあ、それもいいところだよ」 泰生に慰められながら、絵莉子は目の前のオレンジジュースをちびちびと飲み干した。
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