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年末年始を実家で過ごした後、絵莉子は寮に帰った。同じ日に薫も帰ってきたため、絵莉子は一先ずほっとした。
(いつ出て行っちゃうかわからないのは怖いけど…でも焦らないようにしよう。待つのも優しさ…だもんね)
年が明けてしばらくしてから、絵莉子のまわりで風邪が流行し始めた。そして絵莉子のバンド内にも流行は及んだ。
いつも通りバンドの練習をしている教室に入ると、開始時間直前だというのに、教室にはバンドのメンバーが1人しかいない。その1人、雪乃はスマホを見て難しい顔をしていた。
「みんな風邪で欠席、だってさ」
「うそ、大丈夫かな?」
「どうだろ…しかもみんなお腹にくるかんじの症状らしい。バンドメンバー5人中3人が同じ症状でぶっ倒れてんなら、私達もヤバいかもね」
「あ、たしかに…」
「うーん…2人しかいないし、今日はもう帰るか」
「うん…」
2人は荷物をまとめながら、会話を続けた。
「みんなのお見舞い行った方がいいかな? みんな一人暮らしだよね」
「あー、確かに。買い物行く気力もないだろうしね。マスクだけして行こうか」
絵莉子は体調を崩している3人への心配と同時に、自分の予防の必要性も感じた。
(私が風邪をもらって、薫ちゃんにうつしたりしたらマズいよね)
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