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薫は少し黙りこんだ。その表情は、絵莉子の言った言葉の意味を考えているように見えた。 「そんな風に思ってくれてたなんて、考えたことなかった。きっと嫌われているか、哀れまれてるんだろうって思ってた。…絵莉子ちゃんだけだよ。でも、どうして」 薫は伏し目になった。 「…どうして、そんな風に思ってくれるの」 薫がいろいろ知りたがるのは初めてだ、と絵莉子は思った。 今ならば、自分の秘密も打ち明けてもいいのかも知れない。 「私も、薫ちゃんと同じだから。私にも秘密があるの」 薫の目が少し丸くなった。 「絵莉子ちゃんの、秘密?」 「私ね、なんでかわからないけど、いつも好きになるのは女の子ばかりなんだ。ずっと隠してきたんだ。友達にも、家族にも、ずっと」 薫は絵莉子の話に聞き入っている。絵莉子は言葉を続けた。 「まわりの友達と話を合わせるのとか、苦労したんだ。自分に話を振られたりしたら、がんばってごまかしてた。だから、本当の自分を秘密にしたままにする辛さとか息苦しさは、ちょっとは分かる気がするんだ」 絵莉子の話を聞き終えると、薫はぽつりと呟いた。 「そうだったんだ…絵莉子ちゃんも、大変だったんだね。…私は、自分だけが辛いんだって、それしか見えていなかったのかも…」 その言葉は、薫が自分自身に向けて言っているようにも見えた。
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