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中学校を卒業するに従って、美穂への気持ちも消えていった。 高校生になった絵莉子は、あの時美穂に抱いた気持ちは友情の延長線上にあるものだったのだろう、そう思おうとした。そして、いつかは男性に恋をする日が来るのだろうとも思っていた。 しかし、その予想は裏切られるのであった。 高校でも絵莉子は吹奏楽部に入り、トランペットパートに所属した。中学校の頃と違い、高校の吹奏楽部はレベルが高かった。周囲よりも上手く吹けない自分が悔しく、涙を流すこともしょっちゅうであった。 そんな時慰めてくれたのは、1学年上で同じパートのかなえだった。絵莉子は優しいが芯の強いかなえに、少しずつ心惹かれていった。 (いけない、これじゃ中学の時と同じみたいだよ、こんな気持ち) クラスの中でも部活の中でも、盛り上がるのは恋愛の話題であった。話を聞いているのは楽しかったが、自分にはあまり話題を振って欲しくはなかった。 「絵莉子は好きな人とかいるのー?」 「いないよぉ」 「えーっ、絵莉子カワイイから告白したらすぐに彼氏できそうなのにー」 「やめてよー、そんなのないって!」 (彼氏なんていらない、私はかなえ先輩が好き。かなえ先輩のことを見ていられたら…それでいい) かなえが引退するときは寂しいのだろう、絵莉子はその覚悟はしていた。しかし、かなえの引退からしばらくして、同じ部活の同級生から聞いた話に打ちのめされた。 「絵莉子知ってる? かなえ先輩、岡崎先輩に告白して付き合ったらしいよ!」 絵莉子は崩れ落ちそうになった。 (岡崎先輩…フルートパートのかっこいい先輩だ…そりゃ、かなえ先輩も好きになるよね) 「知らなかった、お似合いだよね」 「ほんと!お似合いだよねーっ、あの二人!」 同級生の出した大声に、他の同級生も集まってくる。絵莉子は助かった、と思った。皆噂に夢中で、絵莉子がどんな顔をしているかなど気にも留めていない。 家に帰り、絵莉子は自分の部屋で一人で泣いた。ひとしきり泣いた後、絵莉子は思った。 (もう女の人に恋なんてしたくない。振り向いてもらえることなんてないし、つらくても誰にも言えないから) (それでも…恋をしていた時は幸せだった)
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