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薫との帰り道、絵莉子は薫についていろいろなことを聞き出した。 まず、夜遅くに出歩いていた理由である。これは、突然アイスを食べたいという衝動に襲われ、買いに行ったかららしい。(薫は「自分の分しか考えてなかった、絵莉子ちゃんの分は買えてない。ごめん」と謝罪を入れた) そして、薫がいる学部は文学部であるということである。これは、本がぎっしり詰まった本棚を見ていたため、絵莉子の予想通りであった。もっとも、筋肉質な体つきからスポーツ系の学部も想像していたが。 そして、薫の生活リズムについても知ることができた。 いつも絵莉子が朝起きた時にはもういないのは、コンビニで早朝バイトをしているからだそうだ。また、部活には入っていないが、講義が終わった後はトレーニング室を使っているという。 「トレーニングしてるんだ! すごーい! かっこいい!」 「そんなことないよ」 そう言いながら、薫は困ったように笑った。 その日を境に、少しずつではあるが薫との会話が増えていった。基本的に話しかけるのは絵莉子であったが、それに対しての返事が少しずつ長くなっていった。また、稀にではあるが、薫から「課題どう?」などと話しかけられることもあった。無口なのは相変わらずだったが、薫なりに心を開こうとしているのかも知れない。 (薫ちゃんがちょっと怖かったこともあったけど…人見知りなだけだったんだね) 絵莉子の中に、やっと「2人部屋での寮生活」の実感が湧いてきた。
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