204人が本棚に入れています
本棚に追加
だから、女は疑うんだろう。
きっと目の前の彼にもそうして秘めた想いがあるに違いない、と。
ばか正直な賢治郎に気づき、急に胸が切なく啼き出す。
賢治郎に手を伸ばそうとした瞬間、彼は「あいつ」と小さく声を上げた。
店先に並んだ花々を片付けに、エプロン姿の女性が見える。
背が高くて細くて、ショートカットなものだから一瞬性別がわからなかった。
けれどすらりと伸びたデニムのしなやかな脚と腰つきで、女性だと見分けがつく。
「……きれいな人ね」
考えるより先に声が出ていた。
「きれいかどうかはわからないけど……」
賢治郎がそのあとに続けたい言葉は、聞かなくてもわかる。
.
最初のコメントを投稿しよう!