彼の心の中

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  「彼女しか女じゃないくせに、女に詳しいよね」 「……悪かったよ。ほかの女が全部観察対象でしかなかった、それだけのことだ」  罪悪感のしっぽがちらちらするたび、彼のあたしに対する執着が見て取れる気がした。  ……執着のことも、愛だとか呼べる例って、ないのかな。  無意識に、そこにいるかどうかもわからないのに下腹部を撫でる自分がいた。  四つ足の動物なら、さっさと子どもを作ってあたしたちが生きた証にできるっていうのに。  そんなことを本能的に思って、はじめて気がついた。  人間は産むかどうかを選べるけれど、それって自分の証拠を残すかどうかを選ぶってことだ。 .
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