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──と、あたしの顔を見てくわえた煙草を箱の中に戻した。
「どうしたの?」
「いや。だって、お前……」
「……ん? え、あ」
無自覚だった自分に驚いて──そして賢治郎の顔を見つめ返す。
「いくらなんでも、その気遣いは早すぎるでしょ……」
「そんなこと言ったって、そもそも俺が……」
もごもご言いにくそうにするから、笑ってしまった。
「俺が気になるから、いいんだよ。ほっとけ」
「……おかしな人」
本当に、おかしな人だ。
この世で唯一の女性という彼女を遠目でも紹介してくれるというのに、紹介されるあたしは彼とは他人に言えない関係。
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