第3章 試験

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これが、私の、“自分の言葉”だから。 きゅ、と着物の合わせ目を掴んで、二人を見ていれば、何処かつんと顔を上げた歳三と目が合う。 「………おめぇ、そんなこと言っても何もでねぇぞ、小姓のままだぜ」 「だから、私は小姓でいいんですってば。そもそも見返りなんて、期待してませんて」 「……気色わりぃ」 「失礼な」 無意識でも一応敬語だったが、芹沢さんの前なのも忘れて、部屋にいるように二人で話し続ける。 「そうかそうか、俺の小姓がそんなに嬉しいのか」 「誰がそんなこと言いました?」 「今てめぇで言ったじゃねぇか、その口でよ」 「それとこれとは話が別です!」 「………わっはっはっはっは!!!」 言い合いのようになってきたところに、いきなり大きな笑い声が響く。 驚いて声の主を見れば、にやりと笑って此方を見ていた。
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