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「芹沢きょく、ちょ、」
如何したのかと思い尋ねようとすれば、遮るように口に出した。
「……お主、やりおるな。土方と此処までやらかすのは、沖田以外見たことがないぞ」
さぞ面白そうに笑う芹沢さんに、何故か恥ずかしくなる。
上手い言葉が見つからなくて、ただ黙ってふにゃり、と笑って見せれば、納得したように頷かれた。
「お主は、璃桜だったな」
「はい、そうです」
突然名を確認されて、曖昧に頷いていれば、ぐい、と横から袖を引かれ、腕を掴まれた。
その腕から目を上げていけば、引っ張ったのは、言わずもがな。
「璃桜と私はこの後、膨大な仕事があるのでここら辺で失礼します。行くぞ、璃桜」
歳三によって引かれた腕につられ、芹沢の部屋を強制退出させられた。
襖が閉まる瞬間、最後に見た彼の瞳は。
―――――璃桜、気に入った。
そう、伝えたいかのように細められていて。
その瞳の、澄んだ色にはっとする。
先ほどまでの濁りなど、全く感じさせないほど生き生きとした双眸だった。
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