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一緒に同じ空気を吸って、同じ空間で過ごしている人たちを目の前にしているのにもかかわらず、その人たちを見届けたいだなんて。
そんなの、ひどく、自分勝手で傲慢で。
とてつもなく、そんな自分のことが嫌いになりそうだった。
ふと、小学生のころに呼んだ本を思い出す。
ファンタジーもので、主人公は未来がわかる少女だった。
未来がわかることで、地球を敵から守ることができて、みんなに愛されるその少女のことを、羨ましいと思ったことを覚えている。
「………そんな、簡単じゃなかったんだね」
ぽつり呟いた言葉は、そのまま天井に吸い込まれていく。
その本の主人公も、こんな風に葛藤したのだろうか。
未来が分って、共に生きる人たちをもっとよく知りたいという想い。
共に生きる人たちよりも、いくつも先に進んでしまったかのような虚無感。
二つの気持ちの板挟みが、これほどまでに己の中で重いわだかまりになるとは思ってもみなかった。
またじんわりと滲んできた視界を、見なかったことにしようと瞼を閉じる。
溜息をひとつ零して、腕を瞼の上にのせた。
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