第3章 試験

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「また後でな」 そのまま爽やかにほほ笑んで、部屋に入っていった。 此処が、左之さんの部屋なんだと漸く気が付く。 「璃桜さん、部屋は覚えられたかな?」 「あ、自分の部屋は、端っこなので、すぐわかります」 そこで思う。 歳三の部屋が端っこじゃなかったら、多分私、自分の部屋にたどり着くのでさえ迷子になってる。 後で、誰がどこの部屋なのか教えてほしい。 そもそも、この時代の家と言うものに住んだことなんてなく、勉強してたとはいえ間取りがどうなっているのかさえ分らないのだから。 「と言うことは、他の人の部屋は分らないってことだね」 「はい……」 「後で歳さんにでも教えてもらえばいいよ」 その名前に、うっとたじろぐ。 何と言うか。 こう思っているのは、私だけなのかもしれないけれど。 …………目下、気まずい。 そう思って瞼を伏せた私に、聡く気が付いたのか、苦笑気味に源さんが尋ねてくる。 「歳さんと、何かあったのかい?」 「いえ、何かあったといえば、特に無いですけど…………」 彼の柔らかな笑みと、冷たい瞳が頭をよぎる。 …………そう、別に何もないんだ。 私が、個人的に感情の整理がつかないだけなのだから。
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