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「ふぅ……」
漸く、夕餉の形が見えてきた。
「あとは、これを刻めば終わりだよ。ご苦労様」
「よっしゃー、疲れたー」
ふーっと大きな息と共に声を上げた疲労困憊の平ちゃんを見て、あとは私がやるか、そう思った。
「平ちゃん、源さん、あとは私でも出来るので、いいですよ」
「本当かい、璃桜さん」
「え、いいの?」
驚く二人に、ニコリ笑って言う。
「むしろ、楽しいですから」
純粋に、それもあるけれど。
居場所を与えてくれたからには、早く仕事が沢山出来るようになりたい、そう思ったから。
「璃桜さんがそう言ってくれているんだ、私たちは皆を広間に集めよう」
「おーし、待ってるぞ、璃桜」
そう言ってでていく二人を見送って、包丁を手に取る。
あとは、漬物を刻むだけ。
そう思って、タンっとまな板に下した時。
「いっ…………!」
やってしまった。
調子に乗って、注意力散漫になっていたのが原因だろう。
案の定、わりと深めに指を切った。
じわりと滲む、赤い血に、脳みそが停止する。
え、ティッシュ。
絆創膏は?
……………ないないないない、そんなのこの時代にない。
え、どうしよ。
消毒液とかも、ないのかな。
そんな間にも、真っ赤な血はたらたらと傷口を乗り越えて流れ出す。
それに伴って、ずきずきと痛みが走る。
思考停止状態の私に、突然後ろから声がかかった。
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