第4章 存在意義

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「……璃桜」 その声に、一瞬だけ、傷の痛みを忘れた。 だって、その声の主は。 振り向かなくてもわかる、低く艶やかな声で。 「おめぇ、いねぇと思ったらこんなとこで油売ってたのか。ったく、俺の小姓だったんじゃねぇのかよ」 ……………それは、歳三の声だったから。 「夕餉の準備してただけなんだけど」 ひどい言い草に、むっとして、振り返る。 こっちはあんなに気まずくて、いろいろ考えたっていうのに、何でそんな普通なの。 「………あー、喉乾いた。おい、とりあえず茶……………ってお前!!」 振り返ったことで、私が怪我をしていることに気が付いたらしい。 ただ傷を押さえて立ち尽くしていたのを見て取ったのか、焦ったように声を上げた。 「馬鹿……!! 何してんだよ!」 「えへ、切っちゃった………」 「えへじゃねぇよ! この馬鹿野郎!」 「大丈夫だって、そんな深くないし」 慌てたように素足のまま勝手場に下りてきた歳三に、情けない所を見られたくなくて、大丈夫なふりをする。 本当はとても痛いけれど、口角を上げて見せた。 「何、痛いのに笑ってんだよ。指貸せ」 ビッと言う音に顔を上げれば、歳三は己の着流しの袖を力任せに細く破っていて。
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