第4章 存在意義

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「……………頼むから、止めろよ」 落とされた言葉に、疑問を覚える。 「は……………?」 「俺に黙って、勝手なことすんなよ」 「え、で、でも私は、」 言いかけた反論は、最後まで発されることはなく。 歳三の言葉が、時を止めた。 「………俺が、困んだよ」 「…………え?」 どういうことか、何も掴めない。 私の行動で、どうして、歳三が困ることがあるの? 原因の歳三は、不思議に思う気持ちを抱えて目を白黒させる私に、そっと手を伸ばす。 そのまま、当然のように頭にのった大きな掌の熱に、鼓動が急に存在を主張し出す。 ゆるりとその熱が離れた後も、おさまることはなく。 だって、そんなの、まるで。 「じゃ、先行く。お前もさっさと来いよ、揃ってから飯食うかんな」 「ちょ、待って………」 そんな声も聞こえていないかのように、彼は背を向けて去って行った。 その後ろ姿に。 心が押さえきれなくて、ぽつりとつぶやきが漏れる。 「優しくなんて、しないでよ…………」 どうせ、私のことなんてどうでもよい癖に。 変にかかわらないでと、思う。 心の奥底で、何故だか。 歳三に、認められていたいと………あまつさえ、大切に思われていたいと。 …………期待してしまう自分がいるから。
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