シンクロ

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シンクロ

「達也、早く支度しなさい」 「わかってるよ母さん、部屋で大事な物だけ取って来るから」 ◆  今日、僕と母さんは、この家を出る。  父さんと母さんが、離婚する事になったからだ。  僕は離婚調停の結果で、母さんに付いて行くことになっている。  もう僕も高校生だ。子供じゃない。両親の事情だって解っているつもりだ。  でも、いつからだろう?お父さんとお母さんが、あんなにいがみ合うようになったのは?  いつからだろう、お互いあんなに冷めた目で睨み合うようになったのは?  でも、それも大人の事情。  僕なんかには伺い知れない苦労が有ったんだろう。  僕は二人の気持ちを尊重して、二人の別れを理解してあげるのが、息子としての務めなのだ。 ◆  二階に上がり部屋に入ると、急いで物を片付ける。  ふと目に留まったのは、僕が生まれた時から、小学校入学の頃までが写されたアルバムだった。  懐かしく成って、思わず手に取り、それをめくり始める。  お父さんとお母さんが、とても若い。若者の恋人同士にしか見えない。  その恋人同士が、とっても眩しい笑顔で僕を抱いて見つめている。  お父さんとお母さん、こんな笑顔が出来る人だったんだなぁ~と思った。     
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