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「マジでヤバイですねえ、先輩」 「フン。まあ、怖がらせるために作ってる番組だからな」  鼻先で笑い飛ばそうとした奏の顔が、青ざめている。明らかに強がりとわかる姿に、成留は気づかぬふりでテレビを見ながら、ニヤニヤしていた。 (先輩、めちゃくちゃかわいい)  怖がるフリをして抱きついてみようか。それとも、もっと怖がらせることを言ってみるか。  そんな算段をされているとはつゆ知らず、奏は心の中ではやく終われと念じていた。なるべく意識をそらすため、明日の店の献立はどうしようかと考える。けれどテレビから流れてくる悲鳴や、絶妙なナレーションに意識を引き戻されて、番組が終了するころにはすっかり恐怖にとりつかれていた。 「おもしろかったですねぇ、先輩」 「お、おお。まあな」  虚勢を張る奏の姿に、成留の心はキュンキュンした。思い切り抱きしめてキスをしまくりたい! けれど、いきなりそんなことをしたら蹴とばされそうだ。なにかこう、ナチュラルにキスとかそれ以上とかに持っていけるアイディアがほしい。  じっと奏を見ていた成留は、ピンときて情けない顔を作った。 「でも……。ちょっと俺、怖いです」 「あ? なんでだよ」 「だって、こういうのって寄ってくるって言うでしょう?」 「は?」 「電波を通じてやってくるとも言うし。あの鬼の面の怨霊とか、恐怖映像に引き寄せられたどこかの幽霊とかが、出てくるかもしんないじゃないですか」 (先輩のことだから、俺がこうやって怖がって見せれば、ぜったいに強がるはず) 「ハッ! 情けねぇなぁ。そんなこと、あるわけねぇだろ」 「でも、けっこう有名ですよ。この話」 「そ、そうなのか」  ギクリと奏は頬をひきつらせた。そういえば、そんな話を聞いたことがある。思い出してしまった奏は、気にしないではいられなくなった。 「なんかよぉ、そういうの、なんだったか、ホラ……、撃退つうか、なんか方法あっただろ」
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