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「ったく」
鼻を鳴らした奏は真っ赤な顔のまま風呂場へ行った。奏が体を洗いはじめるころを見計らって、成留はそうっと脱衣所へ行き、そこにある奏の着替えをすべて持ち出しニシシと笑った。
そんなこととはつゆ知らず、じっくりと風呂に入って隅々まできれいに洗った奏は、脱衣所に出て呆然とした。
「あの野郎」
うめいてもしかたがない。どうせ脱ぐんだと落ち着かない自分を無理やり納得させて、腰にバスタオルを巻き成留の部屋へ向かった。
ドアの前で立ち止まり、深呼吸をして腹を決める。
(よしっ)
意を決してドアを開いた奏を、素っ裸でベッドの上に正座していた成留が迎えた。
「いらっしゃい、先輩!」
両手を広げて飛びかかってくる成留に恐れをなして、奏は思わずドアを閉めた。派手な音を立てて、成留がドアにぶつかった。
「な、なにするんですかぁ」
「いや……、なんとなく」
ドアを開いて顔をのぞかせた成留に、奏は苦笑した。
「まったく。いくら照れくさいからって、かわいすぎますよ」
「なんだよ、その感想はよ」
「いいからはやく、部屋に入ってください」
「お、おう」
腕を取られてベッドに連れていかれた奏は、腰にあたる部分にバスタオルが敷かれているのに驚いた。
「ああ、それ。先輩をトロトロにしたら、シーツが汚れるじゃないですか。そうなったら洗濯が大変だろうなって思って」
ニコニコする成留を照れ隠しに殴りたくなる。かろうじて堪えた奏は、低く「そうか」とうなった。
「さあ、先輩。はやくベッドに上がって上がって!」
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