630人が本棚に入れています
本棚に追加
「おい、起きろ。朝飯できたぞ。ほら、成留」
ゆさゆさと揺すられた津田成留は、うーんとうなって目を開けた。
「はよぉーっす」
ぼんやりとした顔そのままの声に、笠木奏はやれやれと嘆息した。
「朝飯が冷めちまうぞ」
「うぃー」
言いながらまぶたを閉じかけた成留は、視線を奏の首筋へ落とすと、目を見開いてガバリと起き上がった。
「おう、おはよう」
「せ、先輩?」
「おん?」
「エプロンの下……。もしかして、裸っすか?」
「んなワケねぇだろう。ちゃんとパンツぐれぇ穿いてんよ」
フンッと鼻を鳴らした奏を、成留はまじまじと見つめた。男らしい顔つきに、しっかりとした首。たくましい肩はエプロンの紐がかかっているほかは素肌だ。黄色のエプロンが力強い胸元から太ももの中ほどまでを隠しているが、そのほかになにか身に着けているようには見えない。
成留が凝視していると、奏は大きな手のひらでクシャッと成留の髪をかき混ぜた。
「おら。とっとと着替えて顔を洗ってこい」
そう言って背を向けた奏は、背後から見ればたしかにボクサーパンツを穿いていた。奏が部屋から出て行ってから、成留は眠気を長い息と共に抜いてベッドから降りた。
「素っ裸より、よけいエロいっすよぉ、先輩」
そんなつぶやきをされているとは思わずに、奏は台所に戻ってみそ汁とご飯をよそった。弁当の冷め具合を確かめてフタをし、包んでいると成留の足音が聞こえてきた。
「ちゃんと手ぇ合わせてから食うんだ……、ぞっ?!」
成留が食卓に着くと思い込んでいた奏は、背後から胸筋をわしづかまれて硬直した。成留は奏の硬い胸をまさぐり、広い背中に額を押しつける。
「おいおい。なにを朝っぱらから甘えてんだ」
最初のコメントを投稿しよう!