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口からは不機嫌な声を出しつつ、奏は成留の頭を撫でた。彼を見ていると、かまいたくなる。母性本能をくすぐるタイプというのは、こういうことなんだろうなと思いつつ、奏は成留から離れようとした。すると成留が腰に抱きつく。
「おい、なんだよ」
「先輩と俺って、恋人同士なんですよね」
どう見ても拗ねた子どもの顔にしか見えない、成留の真剣な表情に吹き出しそうになりながら、奏は「おう」と短く答えた。
「なら、べつに乳を揉んだっていいですよね」
「乳って言うな」
「乳ですよ」
「なに、ふてくされた子どもみたいになってんだ」
とうとう堪えきれなくなって奏が吹き出すと、成留はますます眉を吊り上げる。それがまたかわいくて、奏はクックッと喉を震わせながら、成留を引きはがした。
「おら、飯が冷めるだろう」
「恋人に欲情するのは、当たり前じゃないですか」
「そういう話は、朝っぱらからするもんじゃねぇぞ」
あしらった奏が食卓に着くと、成留も座って箸を取り、いただきますと手を合わせた。
「なんでそんな、裸エプロンみたいなエロい恰好するんですか」
「これをエロいと思うおまえがおかしいんだって、さっきから言ってんだろ」
「先輩、処女じゃないんでしょ?」
ブッと飲みかけたみそ汁を吹き出して、奏はむせた。
「げほっ、しょ、処女って……。俺ぁ、女じゃねぇぞ?!」
「じゃあ、経験済みのお尻なんでしょう?」
「その言い方もどうかと思うが……。まあ、そうだな」
頬を朱に染め目を泳がせる奏を、成留はジト目で観察しながら、こういう顔がかわいいんだよなぁと心の中でニヤついた。
「だったら、俺が乳を揉んだり尻の谷にアレを押しつけても、別にいいじゃないですか」
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