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「俺の口はいま、おまえのアレ味だぞ?」
「だから、いいんじゃないですか。先輩がちゃんと俺のをしゃぶって飲んでくれたんだなぁって、実感できて」
無邪気にはしゃぐ成留に、奏はますますあきれる。
「変態か」
「愛ゆえに、と言ってください。――ねえ、先輩」
甘えた声で言いながら、成留は奏の頬に手のひらを添えた。濡れた瞳でキスを乞われて、奏の喉がゴクリと鳴った。薄く開いた成留の唇から、甘く誘う息が漏れている。
ゆっくりと成留の顔が近づき、奏の視界が埋め尽くされる。ついばまれた奏の唇が開いた。そこに成留の舌が伸びる。
「んっ、ふ……」
濃密なキスに奏の肌は淡く震えた。それに気づいた成留はキスを深くする。
「んっ、ん……、んっ、は、成留」
「ああ、先輩」
うっとりとつぶやいた成留は、さらに濃厚なキスをしようとした。察した奏に突き飛ばされて、尻もちをつく。
「うわっ! なにするんですか、先輩」
「仕事に遅れんぞ。とっとと弁当を持って行ってこい。俺は、もうひと眠りする」
フンッと鼻を鳴らした奏が乱暴な足取りで部屋に行く。見送る成留はニヤニヤしながら立ち上がった。
「かわいいなぁ、ほんと」
奏の耳が真っ赤になっていたことを、成留は見逃さなかった。奏の背中が見えなくなるまでながめた成留は、時計を確認して「あともうすこし、キスできていたのになぁ」とぼやきつつ、奏手製の弁当を持って会社に向かった。
ふすまを開けた奏は敷きっぱなしの布団に倒れ込み、玄関ドアの閉じる音を聞いた。
「ああ……、ったく」
文句を言ってエプロンを外し、あおむけになる。天井に成留の笑顔を描いた奏は、ニヤつきながらボクサーパンツの中に手を入れた。
(ギンギンになっちまってるコレに気づかれていたら、ヤバかったな)
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