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 膝を立てて扱きながら、成留の味を思い出す。熱っぽくかすれた声と、潤んだ瞳。甘えた呼び声に胸も股間もときめいた。 「ふぅ……、んっ、あ……、成留、ぅ」  こんな姿を見られたら、どうなるだろう。犬みたいに飛びついてきた成留に、体中を舐めつくされるかもしれない。 「ああ、成留」  想像に興奮した奏は、急いで枕元のティッシュを取り、その中に想いを吐き出した。 「はぁ」  成留の言うように、奏は男との経験がある。豊富と言ってもいいくらいあった。だからこそ簡単に成留にさせてはやれないのだと、苦々しく思う。 (俺は三十二のオッサンで、成留はまだまだこれからな二十六……。あの顔なら女にもモテるだろうし、性格だって愛されキャラっつうのか? バイトん時も人気あったしなぁ)  それがどうして自分なんかを、という思いがあった。大学時代、バイトをしていた居酒屋で知り合った成留は、愛想も客あしらいもよく人気者だった。健康的な笑顔と年よりも幼く見える顔つき、屈託のない態度と甘え上手な性格。そこになぜかエロティックなものを、奏は感じていた。成留は奏によくなつき、気がついたら彼に惹かれていた。  けれど成留には当時、年上の彼女がいた。ノンケをこちらに引き込むつもりは毛頭ない。奏はバイトを辞めて、以前から目をつけていた商店街のちいさな店舗を借り、居酒屋を開業した。そして成留とは、それっきりになった。  はずだったのが、彼が会社の仲間と飲みに来て再会した。それから成留はちょくちょく顔を出すようになり、常連になって、気がつくと居候になっていた。 (いや……。俺が誘ったようなもんだ)  仕込みの時間に店の奥で恋人の男と口論しているところに、ひょっこり成留が現れた。  成留を奏の新しい恋人だと勘違いした相手にフラれて、とんでもないところを見られたと冷や汗をかいていると、ヘラリと笑った成留が言った。 「いやぁ、ビックリしたなぁ。先輩が男もイケる口だなんて、知りませんでしたよ。でも、すげぇ納得です。なんか妙にエロいんだもん、先輩って。俺が変なのかなぁって思ってたんですけど、そういうことならエロくて当然ですよね。……ねえ、先輩。フリーになったんですよね? じゃあ、俺と付き合ってください」
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