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「なにかした」 これでいいでしょ、と一仕事やり終えた様子で陸を振りかえる。 「え、いや、え?な、なんでその選択?」 「この間、テレビで見た」 一体なにを見たのかは知らないが、どうやら海なりに励ます方法を考えた末の行動だったらしい。 「おい、息しろ」 神崎が蓮の肩を揺すっている。だが微動だにしない。完全に違う世界に魂が飛んでしまっているようだった。 「マジかよ」 疲れたようにため息を吐く神崎。ぺしぺしと頬を叩かれても電源が落ちたままの蓮。その光景がおかしかったのか、海が微かに笑った。 「わ、笑っーー」 ほんの一瞬だった。粉雪のようにすぐに消えてしまったが、陸は確かにこの目で見た。 「げ!なんだよお前ら」 神崎が驚きの声をあげた。どうやら目撃したのは陸だけではなかったらしい。蓮も目にしたらしく、陸と同様に鼻を押さえている。 「だ、だって海が笑ってーーっ」 「先生見てなかったの!?滅多に見られないのに!」 「知らねぇよ!あ、やばい、遅れる」 神崎は立ち上がった。バタバタと慌ただしく洗面室に向かいながら言った。 「悪い!着替え出しといて!」 「わかりました!海、蓮くんの鼻押さえててあげて」 蓮の鼻血の処理は海に任せることにして、陸も慌ててリビングを出る。 朝から騒々しいが、とても愛しくて満ち足りていた。大好きで大切な日々がずっと続きますように、と願いながら、陸の一日は始まった。
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