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「は?なんでお前が謝んの?」
「だって」
自分がマンガなんて持ってきたせいで、こんな事態になっているのかもしれない。だとしたら申し訳ないと思って出た言葉だったが、矢上はきっぱりと言い放つ。
「お前はなんにも悪くないんだから、意味もなく簡単に謝るな」
「う、うん。ーーでも」
「いいから、お前はさがってろ」
強めの口調で言われ、陸は押し黙る。
睨み合う二人を見るかぎり、どうやら以前から確執があったらしいと推察できる。おろおろと状況を見守るしかない陸の前で、不穏な空気はますます濃くなっていく。
「で、お前、今日は練習する気あんの?あるなら早く着替えて用意しろよ」
「命令すんじゃねえよ」
「あのな、命令とかじゃないだろ。制服で練習なんかできねぇだろって話」
矢上の言うことは正論なのだが、人間というのはやっかいなもので、正論を突きつけられると、それが当たっていればいるほど自尊心を傷つけられ、反発してしまうところがある。しかも気が立っているときに淡々と言われると余計に腹が立つ。案の定、部員はキレてしまった。
「ふざけんな!」
声を荒げた部員に、陸の肩がびくりと震える。
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