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ーーお前、俺の言ったこと本当にわかってんのか。
神崎の声が、ふと脳裏をよぎった。
わかってる。ここで陸がなにもできないことなんて。だけど見ているだけというのは、どうしてもできない。
「あの、二人とも落ち着いて」
「部外者はひっこんでろ!」
陸の身体に、ドンッと衝撃が走った。床に尻餅をつく。部員に突き飛ばされたのだ。
「陸!」
矢上の切羽詰まった声がして、陸は慌てて応じた。
「大丈夫!なんともないから」
本当は少しお尻が痛いが、ケガとも言えないようなものだ。今は矢上を刺激してはいけないと平静を装ったのに、それは無意味だった。
「このやろう」
低い唸り声がしたかと思えば、矢上が部員の胸ぐらを掴んでいた。
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