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藤田陸(フジタリク)には目の中に入れても痛くないほど、大好きで大切な存在がいる。
「わー、今日もいい感じ」
朝のキッチンに明るい声が飛ぶ。
フライパンの上には熱々の目玉焼き。黄身がほんの少しトロリとした半熟は父親の好みであり、今日も成功したことに嬉しくなる。
朝からうきうきした気分で、フライパンからお皿に目玉焼きを移し替える。食卓に運ぼうとしたところで、陸は人の気配に気づいた。
「あ、おはよー」
陸の隣に立ち、目玉焼きが乗ったお皿に手を伸ばしている人物に笑顔で声をかける。
すると、くりっとした大きな目が陸に向けられ、「おはよう、りっくん」と可愛らしい声が返ってきた。小学一年生とは思えないほど落ち着いた雰囲気の、標準装備の無表情。だけど決して感情がないわけではないのを知っている。
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