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「りっくん、またいじめられたの?」 「……は?」 「最近はいじめられてなかったのに」 「い、いじ……、あぁ、違う違う!」 どうやら神崎を見て様子がおかしくなった陸の反応で、なにかされたと思ったらしい。陸は慌てて否定するが、最初のころ、神崎に怒鳴られたことは今も海の中に根強く残っていると知り、神崎は苦笑している。 「心配しなくても、いじめたりしてない。まぁ、昨日はある意味いじめたかもしれないが」 「せ、先生!」 余計なことを言うなとばかりに睨みつけると、神崎は肩をすくめた。 「とにかく、海が心配することはなにもない。お前の大事なりっくんは、俺にとっても大事だから」 「先生……」 こういうことを不意打ちで言われるからたまらない。じーんと胸が熱くなる。 「はいはい!俺もりっくんのこと好きー!」 蓮が元気よく挙手する。 「お父さんも好きだし、おじいちゃんとおばあちゃんも好き!あ、あと……」 さっきまでの勢いはどこにいったのか、蓮が急にもじもじしだした。 首をかしげて見守っていると、蓮はちらりと海に視線を送る。 「オ、オレ、ーー海が好きだ!」
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