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「は、早く食べよう?父さん、遅刻するよ」 「あぁ、そうだね」 のんびりとした口調で手を合わせ、望巳は食事を始めた。 「ほら、海も」 陸の隣に海も座り、家族三人の和やかな朝食が始まる。 食事中はテレビをつけない藤田家でのBGMは会話だ。内容は他愛のないものばかり。昨日なにがあったか報告したり、今日の予定を確認したり。平凡な毎日を過ごす陸に、なにか特別に報告するような出来事もないが、父親はいつも些細なことでも嬉しそうに聞いてくれる。まるで日常の埋め合わせをするかのように。 「父さん、今日も遅いの?」 「う~ん、そうだね、今日はちょっと帰ってこられそうにないかも」 さっきまでにこにこと笑顔を見せていた望巳の眉が下がり、申し訳なさそうな顔をする。 あ、やってしまった、と内心の焦りを表に出さないように、陸は笑顔で「わかった」と答えた。
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