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「父さんは格好いいね。たくさんの人を助けてるんだから」 「りっくん……」 へにゃり、と望巳の眉が下がり、嬉しそうで悲しそうな器用な顔をする。少し湿っぽくなった空気を変えるため、陸は両手を合わせパンッと音を鳴らした。 「よし!じゃあ片付けよっかな。父さんも早く用意したほうがいいんじゃない?」 陸の言葉を合図に、父親が「ごちそうさま」と手を合わせリビングを出ていき、陸は食器を手にキッチンへ向かう。泡立ったスポンジでお皿を洗っていると、踏み台の上に乗った海が隣に立った。 「お手伝いしてくれるの?」 こくりと頷いた海に、にこりと笑顔を見せる。 「じゃあ、水で流してくれる?」 泡立ったお皿を渡せば、小さな手で掴み、器用に洗い流してくれる。初めはぎこちなかった動きだが、毎日のように手伝ってくれるので今や慣れたものだ。
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