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言い終えたあと、私の嗚咽だけが店内に響く。
私の頭からお兄さんの手が離れた。
私に背を向けてゴソゴソと何かを始めたかと思うと、ゆっくり振り返ると私の前に土焼きのコップを置いた。
「これ……」
「牛乳やで、お母さんの味や」
優しく笑ったお兄さん。
目を見開いてお兄さんを見上げた。
「今日まで頑張ってきたんや、今日くらいお母さんを想って泣いても誰も悪く言うたりせん」
震える手でコップに手を伸ばして、そっと口をつけた。
いつもと変わらない味のはずなのに、今日はいつもよりも優しい味がしたように思えた。
うわあ、と声を上げてカウンターに突っ伏して泣いた。
温かい優しい手がまた頭を撫でてくる。
「ほら、温かいうちに食べや」
そう言われてゆっくりと顔を上げて、フォークを口に運んだ。
優しい味。
包み込んでくれる、懐かしい味。
嗚咽を漏らしながら、ボロボロと涙を零しながらフォークを口に運んだ。
美味しい、とても。
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