母の味、心温まるパン耳キッシュ

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「唐揚げ、五百グラム頂戴!」 「出来立ておいなりさん!晩御飯にどうですか~」 学校帰りの放課後。 昨日の晩と同じく私は千林商店街の中を自転車を押しながら歩いていた。 夜とは打って変わって晩御飯のおかずを求める主婦層が多く、活気のある風景だ。 いろんな食べ物の匂いが漂ってきて思わず頬が緩む。 なにか帰りに買って帰ろうかな。 そんなことを考えながら目指すのは『カフェ・リスボン』 あのお兄さんに昨日のお礼を言うためだ。 号泣してしまった手前会いに行くのは気が引けたのだけれど、結局行くことに決めた。 角を何度が曲がるとくすんだ水色の屋根が見えてきて、優しいオレンジ色の光を放つ看板が見えた。 邪魔にならないところに自転車を止めて、ちらりと窓から中を伺う。 いいタイミングに来たのか、幸い誰もいなかった。 よし行こう、と腹をくくり『カフェ・リスボン』のドアを押した。
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